2025/07/08

Taiwan Today

文化・社会

63歳、片手の男性が5年で「台湾百岳」を制覇

2019/01/18
63歳で、右の手首から先が無い呉進成さん(写真)は5年間で「台湾百岳」を全て制覇した。その根性と意志の強さは全ての登山愛好家の尊敬を集めている。(自由時報より)
「『台湾百岳』のうちいくつ登った?」 これは登山愛好家たちが初対面で交わすあいさつの言葉である。しかし63歳で、右の手首から先が無い呉進成さんに聞く必要はない。呉さんは5年間で「台湾百岳」を全て制覇したのである。その根性と意志の強さは全ての登山愛好家に白旗を上げさせ、尊敬を集めている。
 
台湾中部・雲林県元長郷に住む呉進成さんは39歳の時、悪性繊維組織球腫に侵されていることを知った。がん細胞は右の掌に広がっており切断するほかなかった。5年前、呉さんは山好きの呉鴻森さんら友人たちの勧めで登山を開始。県内の古坑にある華山、二尖歩道から登り始め、徐々に難度の高い「台湾百岳」に挑戦するようになった。合歓山の北峰が最初の「台湾百岳」だった。
 
高山で傾斜の大きい坂道や断崖など険しい場所では両手両足を使ってよじのぼる必要がある。右手の無い呉進成さんにとっては至難の業である。呉さんはこのため、右手に残っている関節でロープを挟んで固定し、一歩一歩ゆっくりと頂上にアタック。5年間で「台湾百岳」を全て登りきることに成功し、雲林県における登山の世界で一躍有名人となった。呉さんは、「普通の人なら5時間で登頂できるかもしれないが、自分は時間がかかってもいい。8時間費やしても気にしない。かえって途中での風景を人より観賞できる」と話す。
 
呉進成さんによれば、登山の世界で台湾の四大難関ルートの一つとされる「奇萊東稜」こそ、登るのが最も難しい山。急激な上りと下りといった地形を横断するのが難しく、登山者にとっては大きな試練となる。しかし、頂上にたどり着いた時、それは最も美しい思い出に変化する。冬に上部が雪に覆われた山や、早朝の雲と霧の中での朝日。その風景は何度見ても感動的で、障害や疲れ切った体のことをすっかり忘れさせる。呉さんは、台湾にこれほど美しい景色があるとは信じられないと感じるのだという。
 
呉進成さんによれば、「黒色奇萊」という言い方に嘘は無い。巨大な山が太陽を背に逆光となるため、奇萊山は神秘のヴェールをまとっているかのように真っ黒に見える。それに伴って説明のできない不思議な物語も多く存在する。どうすればこのヴェールをはぐことができるのか。それには自ら山頂に登ってみるしかないのである。
 
呉進成さんは昨年末に「台湾百岳」のうち最後に残った山への登頂を果たした。40人近い愛好家たちが呉さんと共に合歓山の主峰にたどり着いた。「台湾は本当に美しい!」 それはその時、呉さんが最も言いたかった言葉だった。呉さんは「台湾百岳」最後の登山に加わってくれた登山愛好家たちに感謝。キャンプファイアーを囲んで皆で歌った。高山の緑の中で雲海と壮麗な山々に囲まれ、遠くには合歓山の群峰が見える。まさに人生の大きな喜びを味わったのである。
 
 

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